五感を満たす歌舞伎の世界

私にとって、特別なひとときといえば「歌舞伎」

と言っても、毎月のようにお芝居を観に行く…というのは夢のまた夢。年に1回、友人と「大人の贅沢時間」を過ごすことが最高のご褒美。(そのご褒美が、今年は何と3回も!!幸せです)

演目そのものの面白さ、役者さんの姿や声、そして立ち振る舞い、舞台と観客が生み出す場、出演する方々を引き立てる多くの方々など、歌舞伎の魅力は語り尽くせないものがあります。

加えて、イヤホンガイドや筋書きで知る「言葉の世界」も欠かせない要素。日常のなかに息づく言葉で、歌舞伎の世界をもとにするものも少なくありません。

今回は11月に観た「平成中村座」公演で、私が気づいた「歌舞伎の世界が語源となる言葉」などについて、いくつかご紹介したいと思います。

  

はじめに、お芝居の幕をあける「定式幕」から。

定式幕(じょうしきまく)

歌舞伎の舞台で使われる三色の引幕を定式幕と呼びます。

 「定式」とは、「いつもの決まった形」という意味で、歌舞伎の幕内では良く使われる言葉です。(中略)つまり「定式幕」とは「いつも使う幕」という意味から定着した呼称です。

 定式幕の起源は初代中村勘三郎が幕府の御用船「安宅丸(あたけまる)」の幕を拝領し、その配色を中村座の幕としたと伝えられていますが、その後、江戸三座と呼ばれた「中村座」「市村座」「森(守)田座」がそれぞれ違った幕を使用するようになりました。

 現在、歌舞伎座で使用されている定式幕は、左から「黒」「柿色」「萌葱(もえぎ=濃い緑色)」となっています。ちなみに国立劇場では「黒」「萌葱」「柿色」の並び、また中村座の「黒」「白」「柿色」は、平成中村座公演や中村勘三郎襲名披露興行で使用され、こちらもおなじみとなってきました。

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歌舞伎美人(歌舞伎 今日のことば)
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差金(さしがね)

悪事など「誰それの差金だ」と用いられる陰で操る人物を指す言葉

歌舞伎では

『鏡獅子』では竹棒の先に蝶々をつけて、獅子のまわりを蝶が飛ぶ姿を表現しますが、この棒のことを「差金」といい、歌舞伎独特の小道具のひとつです。蝶のほかにも、鳥や人魂を表わす焼酎火など、飛んでいる様子を表現するには大概これが使われます。

 棒の先端の部分は特に緩やかで繊細な動きが必要ですので、古くから鯨のヒゲが多用されてきましたが、近年ではこの入手が難しくグラスファイバーなど新しい素材が工夫されています。

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今回は昼の部も、夜の部も差金を見ることができました。

  

黒衣(くろご/くろこ)

現在は黒子と綴る方が多いかもしれません。

表に立たず、支援や何らかの処理・作業を行う人物のこと。

歌舞伎では

正しくは「クロゴ」と言います。黒い衣裳に身を包み、顔を頭巾で隠して舞台で俳優の演技を助ける人、また、その人が着ている衣裳を「黒衣」といい、芝居の途中で小道具を持ってきたり、不要になったものをさりげなく片付けたりと、大変便利な役割を勤めます。

 「後見(こうけん)」の一種で、後見は様式性の高い演目や舞踊では裃(かみしも)や紋付姿で手助けをする場合もありますが、大概の芝居では「黒衣」になります。「黒」は歌舞伎では「見えない」ことを意味しますので、黒衣として登場したときには、見えていないという約束を観客も心掛けておきます。

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早替わりを助けたり、舞台で用いる道具を運んだり…息すら潜めているのでは、と感じるくらい気配を消している黒衣さんたち。今回は座席が舞台に近いこともあり、上からその様子を拝見することができました。

  

見得(みえ)

みえは、動詞「見える」の連用形が名詞化したものだと言われ「見・見栄・見得」と綴ります。

「見得/見栄を切る」「見栄/見得を張る」という使われ方が多いのではないでしょうか。

歌舞伎では

江戸の荒事*から発した歌舞伎独特の演技の手法。市川團十郎家が信仰した不動明王の姿を模したという説もあります。

 大きな動きを見せてから、手・足・顔・目の隅々まで神経を行き届かせ、強く見事な形に決めます。特に力強さを表現する時には足の親指を立てたり目を寄せるなど、より効果的な演技が加わります。

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*荒事(あらごと)

元禄【げんろく】時代の江戸で初代市川團十郎【いちかわだんじゅうろう】によって創始された、荒々しく豪快【ごうかい】な歌舞伎の演技を指します

文化デジタルライブラリー 
https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/modules/kabuki_dic/entry.php?entryid=1009

「だんまり」「帳消し」などもお芝居の中で出てきましたが、そろそろお開きに…ということで最後に「花道」を

  

花道(はなみち)

引退する時など「花道を飾る」と用いられる言葉

①歌舞伎劇場の舞台設備の一つ。観客席を縦に貫いて左側(下手)にある、俳優の出入する道。揚幕から舞台に向かう歩板(あゆみいた)

②相撲の土俵場の四方の角に通っている四本の通路

③はなばなしく歩く道。はなやかな行路。また、人に惜しまれて引退すること

日本国語大辞典

歌舞伎では

舞台の下手(左側)から客席を貫くようにまっすぐ伸びている通路を「花道」と呼び、人物の登場や退場に使われます。能舞台の「橋掛り」から次第に変化して歌舞伎ならではの舞台機構となりましたが、「花道」というのは晴れがましさを感じさせる素晴らしいネーミングです。

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歌舞伎美人(歌舞伎 今日のことば)
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咲かせる花はいろいろ。誰もが人生の花道を歩み、新しい年へと向かいたいですね。

  

歌舞伎関連(姉妹サイト Cool KOYOMI

平成中村座・小倉城公演2023 さかなづくし

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