小満(しょうまん)・紅花栄(べにばなさかう)
ことばは人を連想の世界へ誘う
そう感じるのは、七十二候が 紅花栄(べにばなさかう) に入るからでしょうか。
5月26日 金曜日
旧暦4月7日
今日から
二十四節気では【小満(しょうまん)】
七十二候では【紅花栄(べにばなさかう)】
の気・候です。
紅花といえば、産地として山形最上川流域が有名ですね。
演目は忘れてしまいましたが
花魁(おいらん)が、身請けされて山形の紅花を扱う豪商のもとへ嫁ぐ……
そんな歌舞伎の一場面を思い出しました。
彼女には相思相愛の相手もいますが、諸事情で江戸を離れることに。
この橋を越えたら、もう戻ることはできない
残す思いを断ち切るような所作に、胸の奥がきゅっと痛くなった記憶があります。
かと思えば
『昔馴染と紅花染とやらで、おつな様子さ』
という台詞があるのも歌舞伎の一場面。
昔馴染(ムカシナジミ)と紅花染(ベニバナゾメ)とやらで、異(おつ)な様子さ
昔馴染みと紅花染めは、色がさめても「き」が残る。「き」に「黄」と「気」とをかけて、昔馴れ親しんだ人は、いつになっても忘れることができないというしゃれ
故事俗信ことわざ大辞典より
洒落(シャレ)好きな江戸の人らしい台詞ですよね。
そして、意外にも(?)洒落っ気があるのが光源氏。
「末摘花(すえつむはな)」
高貴な家柄の生まれではあるものの、家族にも、経済的にも、容貌にも恵まれたとはいえない姫君です。
夜をともにして、ほのかな雪あかりのある朝。
初めてみた姫君の素顔に驚く源氏の君。
(なかなか辛辣な描写です)
日ごろは、扇でほとんど見えない(見せない)彼女の顔。
鼻は象のように長く、しかも赤い。
その姫君を、鼻が赤い=花が紅いから“末摘花”と呼ぶとは。
物語や芝居のなかに生きる人々の姿は、現実の世界に生きる私たちを映すようにも感じます。
人生の味わいには、甘さだけでなく、酸っぱさも苦味もあるもの。
その酸味や苦味を深みへとかえてくれるのは、日本人の持つ洒落っ気なのかもしれませんね。